マイクル・Z・リューイン『死の演出者』
死の演出者 (ハヤカワ・ミステリ文庫 (HM 165-2))
- 作者: マイクル・Z・リューイン,石田善彦
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 1993/01
- メディア: 文庫
- この商品を含むブログ (6件) を見る
あなたの料金を聞かせて。暇を持て余すわたしに、ひさしぶりに依頼が舞いこんだ。殺人罪に問われた娘婿を助けてほしいという。母親の横柄な態度にはうんざりしたが、夫の無実をひたむきに信じるその娘に心をうたれ、わたしは調査を始めた。だが、関係者の証言は夫の立場に不利に働き、やがてわたし自身も事件の裏に潜む陰謀の渦中に。探偵サムスンの寡黙な知性が醜怪な人間性を暴きだす、人気シリーズ第二弾。改訳決定版
アルバート・サムスンシリーズ二作目です。
ポケミス版で読んだのですが、まあ訳が悪い。古いというのも一つの要因なのでしょうが、とにかく日本語が拙く、読みにくい。さらに言葉選びよくなく、雰囲気の面白さが半減。読むならばポケミス版はおすすめしません。
内容の話に移りますが、今作は前作と異なり、序盤から殺人事件が起こります。
ベトナム戦争で精神を病み入院していたラルフ・トマネクという男がガードマンとして就職するも、無実の男を銃殺してしまいます。彼はその場にいた不動産業者の男に撃てと命令されたために撃ったと主張しますが、それは通らず、第一級殺人罪に。
そこで彼の妻はサムスンに彼が刑務所から出られるように依頼します。
う~ん。正直好きじゃないです。
前作『A型の女』が面白かったので手に取ったのですが、前作と雰囲気も全く違いますし、さらに今回は物語の求心力となる“謎”がない。
前作で好きだったのは依頼人の少女とサムスンの軽妙なやりとりや絶妙な関係だったのですが、この作品はそういったものがほとんどないです。
捜査パート自体はまあ面白くないことはないのですが、魅力的な人物もほとんどいませんし、軽妙なやり取りもあまりない。皮肉ばっかりでユーモアの良さはあまり感じられませんでした。
依頼人であるガードマンの妻とその母親の関係性とかに面白さをつくろうとしているのは感じられたのですが、ただ純粋に母親が鬱陶しいだけであまり面白さに変換できていなかったように思います。
また、今作は謎を解決するのではなくいかにして男の無罪を示すかというのが主眼になっているのですが、この内容ではさすがに長編一つ分引っ張るには無理があるように感じられました。
中編ぐらいまでなら十分面白いと思うのですがさすがに長編にするには弱いと思います。
そして最後に、探偵像を生かせていないのが一番の問題です。
暴力を憎むであるとか、酒煙草をしないとか心優しい探偵が魅力であったはずなのに、それを全部潰してます。そういうものならばもっと面白い作品はたくさんありますし、明らかな筆のノリの悪さが感じられます。なぜこういう展開を選んでしまったのかはなはだ疑問です。
ということで、期待値の半分程度の面白さといったところでしょうか。