小松左京『継ぐのは誰か?』
「チャーリイを殺す」―ヴァージニア大学都市のサバティカル・クラスの学生達に送られてきたこのメッセージは、単なる殺人予告ではなく、“人類への挑戦”だった!人類の科学技術を超えた手段で攻撃を仕掛けてくる“何者か”を追って、舞台はアマゾンへと移るのだが…。人類は果たして地球の“最終王朝”なのか、それとも“後継者”が現れてくるのか。
かの有名な小松左京の書いたSFミステリです。
といっても、ミステリ的趣向はあくまで、核心へと迫る後半のためのジャンプ台といった印象です。
そもそものこの作品の主題はタイトルにもある通り“(人類を)継ぐのは誰か?”です。
例えば、第一章の序文の後
人類は完全じゃない――それが僕たちの間で、何度もむしかえされる議論のテーマだった。そんなことはむろんわかりきったことだし、それをいったところで、どうなるというものでもなかった。
と始まる。人類は完全ではない。だからこそ、その人類はいずれ衰退する。その時に、それを継ぐのは何者か。
とまあ非常に思索的な主題ではあるのですが、作品自体はどちらかというと娯楽度が高く、エンターテインメント性に富んだものです。
まずミステリ要素を単体としてみると、謎解きやその過程というよりも要素としての本格色が強いです。
舞台はヴァージニア大学。
「チャーリイを殺す」という殺害予告を奇妙な方法で聞かされた彼らは警察の手を借りることに。そうするとなんと、ここ二か月の間に同様の事件が三件、しかもモスクワ、京都、ソルボンヌと別々の場所で起きていた。
チャーリイを護衛する彼らと警察だったが……。
あらすじとしては以上のような感じ。
上で述べた連続殺人以外にもダイイングメッセージ、不可能犯罪、など要素として非常に濃い。
けれども、解決は面白いけれども、諸所の要素についてはあくまで先へとつなげる線路という印象が強いです(一度読み終わってから振り返ってみるとSFミステリとして上手くできてるように思えるのですが、初読だとさすがに高評価はしにくいように思います)。
またその一方で青春小説的な側面も持ち合わせています。
大学生たちの色恋も一応描かれていますし(これに関しては非常にあっさりとしたものではありますが)、また事件を経て感じる彼らの苦悩であったりだとか、壮大なスケールの問題に巻き込まれていく中でのあくまで一大学生的な立ち位置であったりだとか、非常に見どころが多いです。
また、そういう点ではひと昔まえのライトノベル的、セカイ系的な諸作に繋がる、主人公やそのヒロイン等が巨大なスケールの問題へと直接的に干渉するという構成をとっているのも一つの見どころかもしれません。
そして、やはり一番の魅力、というか凄さは、先見の明。
インターネットの発達と、それによって引き起こされる諸問題の姿は今の現実と繋がるとこ利が多くみられますし、またそうした近未来に向けた先見の一方でどちらかといえば遠未来的な人類自身の未来にも目を向けている点は秀逸です。
ですから、舞台となった時代や場所以上の壮大さを感じさせる作品になっています。
ということで、ミステリを纏ったSFとして、傑作です。