猫の巣

読んだ本の感想など、気の赴くままに。

白井智之『少女を殺す100の方法』

 

少女を殺す100の方法

少女を殺す100の方法

 

とある名門女子中学校。ある日、二年A組の担任・ススワタリが血相を変えて校長室に飛び込んできた。鍵のかかった教室で、生徒20人が死体で見つかったのだ。教頭のクサカベは学校に都合よく真相を偽装するため、警察よりも先に犯人を捕らえようと目論む。同級生20人を皆殺しにした犯人は誰なのか?事件は思いもよらない方向へ転がっていく。(少女教室)学園、ホラー、メタミス、エログロ、SF。少女20人の死をテーマに紡がれる、5つの本格ミステリ。  

 

少女20人の死をテーマにした作品5編が並んだ“鬼畜系特殊設定パズラー”として名高い白井智之の初短編集。

非常に癖の強い作品ぞろいで、エログロに耐性のある人でなければ読んでいて苦しい部分もありますが、基本的に非常に良質な本格ミステリの作品集なので本格ファンにはぜひとも読んでほしいです。

 

「少女教室」

女子中学校の生徒が教室で全員殺されるという非常に強烈な作品。といってもおそらく収録作中最もエログロ要素は薄い印象。ロジックの構築だけに焦点を当てた本格ミステリ作品で、本格ミステリファンにとっては垂涎ものです。

ロジックに関して、よく検討してみると甘い部分もいくつか見られるのですが、そ子をしっかりとカバーできているのは非常に好印象です。

 

「少女ミキサー」

一日一人上から少女が落ちてきて、生きた人間が五人集まると回り出すミキサーの中での殺人を扱ったミステリ作品。

あまりにも突拍子のない設定に感じますが、この設定だからこそできるトリックやホワイダニットは非常に巧く、本格ミステリに対するこだわりを感じられる作品です。

ロジックに関しては一部個人の感性に依る部分があり、その点に関しては飛躍し過ぎのように感じてしまいます。ですが、この作品の見どころは強烈な設定とトリック、そしてそこにつなげるために周到に張られた伏線なので大きなマイナすにはなっていません。

 

「「少女」殺人事件」

変則的な犯人当て。ほとんど類例の思いつかない作品です。強いて言うならば、とある作家がインタビューで「大学時代に読んだ他大学の会誌に載っていたユニークな犯人当て作品」として挙げていたものがこの作品と同じような系統だったように記憶があります。

 

「少女ビデオ 公開版」

収録作中最もエログロ要素の強い作品です。しかし、しっかり伏線も張られた本格ミステリです。この作品の魅力はやはり独創的な謎でしょう。真相自体は分かりやすいものの、謎の配置の仕方が上手く、そこからのラストの展開も非常に面白いです。

 

「少女が町に降ってくる」

少女が降ってくる町を舞台にした特殊設定ミステリです。凝り具合が尋常ではなく、伏線の量、トリックの量、ともに異常で、最も濃度の濃い作品です。個人的には最も好きな作品です。ただ、一つ言うならば少し急ぎ足な部分が見られたため、もう少し分量を増やせばさらに強烈な作品となったように思います。